シダーウッドを手に隠す
- 恋人を消した。休日の夜に会うことが多くなっていた恋人と、その日は久しぶりに昼食を共にした。現在興味のあるもの、仕事で課題だと考えていること、ネットで見た記事について。そんなとりとめのない会話をして、自転車を停めていた駐輪場へ行って。「じゃあね。」軽い調子で投げられたその挨拶を聞いてすぐ、私は恋人を消した。...
心は江の島へ、脳は駅ビルの無印良品へ
- 老人がいた。老人はぼうぜんとしていた。白の少ない目をぱっくり開けて、ものを噛めない口をあけたままで。ぼうぜんとしていた。ぼうぜんとしていた。ぼうぜんとしていた。おれはすれちがって、老人が向くのと逆方向に進んでいった。足取りは不思議と軽かった。発泡スチロールみたいに拍子ぬけの軽さだ。